先月になりますが、中央省庁が雇用する障がい者数を水増ししていたことが大きな問題となりました。8月28日に厚生労働省は各省庁を再点検した結果、計3460人分が国のガイドラインに反して不正に算入されていたと発表しました。雇用の旗振り役の中央省庁自らが数値を偽っていた実態に大変残念な思いを抱きました。
正直、私も偉そうなことは言えません。勿論、弊社は数値を偽ることはしてませんが、一昨年度まで障がい者雇用促進法が定める法定雇用率を達成出来ず、ペナルティーとして国に納付金を払ってました。恥ずかしながら私が社長を拝命した後3年間はずっと納付金を払っていたのです。担当者からその報告を受けても、まあそんなもんかと思ってました。障がい者雇用への意識の低さは本当に情けない限りでした。
その意識を大きく変えさせてくれたきっかけがありました。それは一昨年通った松下幸之助経営塾でお聞きしたアイエスエフネットグループ渡邉代表の特別講話です。渡邉さんは”雇用の創造”をグループの大義に標榜し、履歴書の過去にこだわらず意欲を基準に社員を採用することを実践され、ニート/フリーター、障がいのある方、ひきこもりの方など一般的に就労が困難とされる方々への雇用にも積極的に取り組んでおられ、かつ利益も出されています。
グループ哲学の一つとして”利他の心”が掲げられてました。人間の成長は利己から利他によって成し遂げられる。障がい者の方がチームに加わることにより、その方を守ろうとするチームワークも芽生えると学びました。この仕事が障がい者の方に出来るかではなく、障がい者の方に何が出来るかという視点の大切さを知りました。
講話の最後に渡邉さんが偏見差別のない会社環境につながる大事なエッセーとして”1人1秒のプレゼント”を紹介してくれました。そのストーリーはある学校での運動会・学級対抗リレーにまつわる話です。あるクラスに大変明るく人気者の生徒がいましたが、足に障がいがあり早く走ることが出来ませんでした。彼はまわりの空気を察して先生に自分が走ってはリレーで一番になれないので走らないと伝えました。先生はその日の学級会で”リレーは、みんなが力を一つに合わせてがんばることが素晴らしいんだよ。大切な友達を傷つけながら優勝したって、何が嬉しい?、何が素晴らしい?”と話しました。その後クラスに沈黙が続いた後、ある生徒が”クラスみんなが1人1秒早く走れば全員参加で勝てるよ!”と言い、みんなで練習を重ね見事優勝に輝いたそうです。この話をお聞きした時泣けましたし、今この話を書きながらまた泣けてきます。
渡邉さんの講話をお聞きし、障がい者雇用に真摯に取り組まなければならないと気持ちを新たにしました。千葉に戻り、担当者と一緒に東京中野にあるアイエスエフネットハーモニーというグループ会社を訪ねました。そこでは障がい者の方々が生き生きと働き、そのような状況をどうやって実現していくかのノウハウを提供する障がい者雇用サポートを行っていました。今まで見たことのない光景を目の当たりにし大変刺激を受けました。
渡邉さんの講話そしてアイエスエフネットハーモニー社訪問から学んだことを活かして早速障がい者雇用に取り組んだ結果、昨年度は法定雇用率をクリア出来ました。今後ともクリアは最低限の目標として常に真摯に障がい者雇用促進に取り組んでいきたいと思います。考えてみれば、健常者であれ障がい者であれ、それぞれひとりひとりが個性溢れる人材です。いかにその個性を、得手不得手を会社組織の中で活用していくか、適材適所を実現していくか、それはマネジメントの力量にかかっているのではないでしょうか。果たして自分は?まだまだ努力しなければなりません。
話は戻りますが、今回の中央省庁による雇用水増し問題で障がい者雇用促進が停滞するとしたら残念です。私がこんなこと申し上げるのはおこがましいですが、中央省庁には可及的速やかに是正いただきたいし、我々民間も、心情的には何で我々だけが厳しくチェックされ納付金を払わされるんだという気持ちにはなるものの、粛々と障がい者雇用促進法を遵守するよう努めていくことが肝要に思われます。そして、それがよりオープンな社会につながっていくのではないでしょうか。。。